工場や作業場の撮影では、ご担当者から「うちは絵になるようなものがないので」と言われることがよくあります。実際に伺ってみると、そんなことはありません。ただ、毎日そこにいる方には見慣れた景色になっているだけです。
現場に入ってから、私たちが探しているものを3つ挙げます。
手が動いているところ
機械の全体像より、手元のほうが伝わります。部品をつまむ指先、工具を握り替える一瞬、計器を覗き込む姿勢。そこには、その会社が何を大事にしているかが出ます。
全景は、あとから見返したときに「大きな工場だな」以上のことを伝えません。手元は、見る人に自分の仕事を重ねさせます。採用のための写真であれば、なおさらここが効きます。
その会社にしかない道具
長く使い込まれた治具、独自に手を加えた台、社内でしか通じない名前のついた棚。こうしたものは、外から来た人間には強く目に映ります。
「これは何ですか」とお聞きすると、たいてい長い説明が返ってきます。その説明そのものが、その会社の歴史だったりします。写真に写るのは道具ですが、伝わるのは積み重ねた時間です。
光が入ってくる場所
工場の照明は、作業のためのものであって、写真のためのものではありません。天井の蛍光灯だけで撮ると、平坦で、どこの工場か分からない絵になります。
そこで、シャッターや窓から入る自然光を探します。朝と昼と夕方で入り方が変わるので、下見の段階で時間帯を決めます。光が斜めから入る場所を一つ見つけられれば、その現場の撮影はほぼ決まったようなものです。
先に伺っておきたいこと
現場の撮影では、安全と機密の2つを先に確認させてください。立ち入ってよい範囲、ヘルメットや保護具の要否、稼働を止められない機械、写ってはいけない図面や取引先の名前。ここを先に決めておくと、当日は撮ることだけに集中できます。
また、働いている方の顔が写る場合は、ご本人の了解が要ります。人数が多いときは、事前に社内へ一言お伝えいただけると、当日の空気がずいぶん変わります。カメラを構えられていることを知っている現場と、知らない現場とでは、写る表情が違います。